日本医師会は、10月28日の定例記者会見において、10月26日に公表された中医協委員の内定について、「今回、日本医師会に特段の相談もなく中医協委員を内定されたことは誠に遺憾である」とのコメントを発表した(「中医協委員人事を読み解く三つのキーワード」を参照)。
常任理事・中川俊男氏は、「中医協の設置を定めた社会保険医療協議会法は、診療側委員について『医師、歯科医師および薬剤師を代表する委員』と定めており、日本医師会は16万5000人の会員から成る医師を代表する組織である」と主張。また、中医協委員の任命について、「中医協の在り方に関する有識者会議」の報告書は、厚生労働大臣が一方的に任命するのではなく、それぞれを代表するにふさわしい人を関係団体が推薦し、これに基づいて厚労大臣が任命すべきとしているが、この点についても「過去の真摯な議論を考慮することなく、独断での内定に至ったことも非常に残念」と述べ、「いかに政権が代わったと言えども、選定理由の説明責任は十分に果たされるべきだった。日本医師会は、今回の中医協委員内定に至る人事プロセスを断じて容認することはできない」と批判した。
一方で、長妻昭・厚生労働大臣が、10月26日の記者会見において「診療報酬全体を手厚くする」と述べたことについては、「これまで日医が主張してきたこと。期待したい」と評価。今後も日本の医療を守るため政策提言を行い、中医協に対しても「診療報酬についての幅広い情報と深い経験を基に、適時適切に意見を申し述べていきたい」とした。
「新たに中医協委員となった京都府医師会副会長・安達秀樹氏、茨城県医師会理事・鈴木邦彦氏を通じて日医としての働きかけを行うつもりがあるか」との質問に対しては、「委員が決定した以上は色々なアプローチを行っていく。また希望があれば可能な範囲で情報を伝えるなどの支援を行う」との考えを示し、安達氏からは既に支援の要請があったことを明らかにした。新たな委員が都道府県医師会からの選出であることについては「大変だと思う」とコメント。「日本医師会の事務局、日医総研の分析力は、想像以上にすごいものがある。日医執行部の委員はそれをフルに使い、データに基づきながら発言してきた。我々のようにそれが使えないとなると非常に不利だろう。中医協では、その場の判断で発言しなければならない。しかし、直前に手に入ったデータを分析することは、個人の力では到底できない。そういう意味では心配している」として適宜支援を行う考えを示した。
中医協の審議が2カ月間ストップしていたこと、委員の交代が改定に与える影響については、「かなり支障は出るだろう。無理なスケジュールで審議しなければならない。新任の先生方は慣れていないので、議論が深まらないうちに決まってしまうことは危惧している。その意味では事務局(厚労省)側は仕事がやりやすくなるという気がしないでもない」と述べた。
任期終了に際し、一委員として悔いは残るかとの質問に対しては、「悔いはない。厚労大臣の任命によるものなので、そういう種類の問題ではない。一方、しなければならないことは、まだ多くある。中医協の場で発言できなくなることは歯がゆくはなるだろう」と答えた。今後の中医協議論については「病院対診療所の財源の奪い合い、対立構造に持ち込むようなことが決してないように」と要望。また、中医協会長である遠藤久夫委員(学習院大学経済学部教授)が10月10日に講演おいて「病院・診療所の診療報酬配分において、診療所に有利な配分がなされていることは認識している」と述べたことに対し、「中医協の会長がこのようなことを言うのはいかがなものか。本来であれば中医協の場で真意を確かめたかったが、ぜひきちんと説明をしてほしい。会長としてもう少し慎重に判断し、発言された方が良いと思う」と主張した。
また今後、社会保障審議会など他の審議会・検討会からも、任期切れを期に日医委員を外していくとの推測もなされていることについては、「今は新政権が発足したばかりで、色々な試行錯誤があるだろう。そういう手法はまずいということが分かっていただけるのではないかと思う」とコメントした。
さらに、長妻厚労大臣が診療報酬について「私としてはどこかを減らしどこかを増やすより、診療報酬全体を引き上げ、その上でもう少し病院の評価を引き上げ、地域医療を手厚くしたいと考えている」と述べたことについて、「我々がずっと言っていたこと。日医の主張とあまり違いはないと考える」と重ねて指摘し、「8月に自民・民主両党のマニフェストが出揃った段階で行った記者会見でも、民主党のマニフェストが非常に分かりやすく、日医の考え方に非常近いと申し上げた。まさにその通りであり、民主党マニフェストには日医が主張してきたことが多く含まれている。ぜひがんばって実現していただきたい」と要望した。

